「お庭は一日にして成らず」住まう人と共に成長する外構こそが美しい
お庭は時間と共に深まるエイジングが美しい
いつもご覧いただきありがとうございます。富山です。
外構は造ってすぐよりも、ある程度の時間が経ってからの方が美しいと思うのです。植物が育つことで無機物に命が吹き込まれ、それによって建物や周囲の環境に馴染む、と言うかその環境の一部となって溶け込むから。
とくに手入れの行き届いたお庭は住まう人の想いが宿り、時には感動すら覚える事があります。ぼくはこれをお庭のエイジング効果と言っています。
とは言え、耐久性の低い部材を使ったり、あるいは手抜き工事のたぐいで直ぐに壊れてしまってはせっかくのエイジングが台無しになってしまうこともあります。
今回ご紹介させて頂くこちらのお客様宅も、隅々まで手入れが行き届いていてグレー基調のモダンな住宅に溶け込んでとても素敵なお家でした。ある一点を除いて・・・
外構に使用する部材は耐久性が求められる
昨年の秋に新規のお客様からこんなメールを頂戴しました。
「家を建ててから約10年が経ちます。外構工事もその時に一緒にやりましたが(結構名のあるところだったのですが・・・)現在の状況は崩れ落ちる寸前です。あまりのことに半ば放置していたのですがそうもいかず・・・
インターネットなどで色々探しはじめました。一度作ったんだからもう、お金はかけたくない、でも、もうこんな思いはしたくない。そんな時、御社のホームページにたどり着き、一度ここに相談しようかと思いました。忙しい時期とは思いますが、どうぞよろしくお願い致します。」
一切の手入れもせずに雑草ボウボウの状態で放置していたならばここまで辛いお気持ちにはならなかったと思います。でも、忙しい合間に雑草を抜いて、丹精込めて植物を育ててきたからこそ、壊れてしまいそうな外構を見るのはつらい。そんな嘆きがヒシヒシと伝わってくるメールでした。
わかりますか? そう、枕木の塀が今にも倒れそうになっているのが・・・
こちらのお庭は歩道側よりも30cmほど敷地が高くなっているので枕木が土留めの役割も担っているのですが花壇の水分を枕木が吸収してしまい腐って土圧に耐えられなくなったしまったワケです。
確かに枕木は最初からナチュラルな雰囲気を持っていてエイジング効果も抜群なおススメの材料ですが地中の水分を吸い上げてしまうので腐りやすい難点があるので使用する場所には注意が必要なのです。
エイジングにはメンテナンスが欠かせない
ということで今回は腐った枕木を撤去してグレー基調の建物にとても良く似合う型枠ブロックを使用した土留めでご提案させて頂きました。え?オシャレな住宅に普通のブロック塀?!って思われるかもしれませんが以外にもモダンな住宅にはブロック塀は良く馴染みます。それをご理解頂けるように合成写真を使ってプレゼンさせて頂きました。
しかもブロックの中が空洞でそこにコンクリートを流し込んで強度を上げる型枠ブロックを使用するので頑丈で崩れ落ちる心配はありません。おまけに塀の中でもお手頃価格なのでおサイフにも優しいブロックです。
ちなみに枕木は防腐剤がタップリと塗られているので燃やせないから埋めたてるしかなく、廃棄処分に掛かる費用は高めです。逆にブロックは砕いて路盤材などにリサイクルが可能なので廃棄費用も安くエコですね。
おかげさまで昨年は工事も忙しく、雪が降るまでに工事に入れるかどうかヤキモキしましたが何んとか間に合ってホッと一息。工事スタッフも凍える寒さのなかで一生懸命にモルタルを練っています。
残念ながら完成後のお写真がまだ撮影出来ていないため、今日はご紹介できませんがお客様からは「まるで最初からこうだったかのように違和感なく仕上がったのでブロックを選んで良かった」との嬉しいお言葉を頂戴しました。それにしても美しいお庭ですね。どうせなら新緑が美しい初夏にお伺いさせて頂いて写真を撮影したいなあ。
でもこの美しさは10年という時間の経過によって得られたエイジングの効果と愛情を持ってメンテンナンスをされてきたお客様の想いの現れなのだと思うのです。だから今回の改修によって前よりももっとステキなお庭になってくれたらこんなに嬉しい事はありません。
ぼくは今から初夏が待ち遠しいです。
外構は造ったら終わりではない
外構やお庭をデザインして、それをカタチにする事がぼくの仕事ではあるけれど、ぼくはただ器を造るだけなんです。だから本当の意味でお庭を創り上げていくのはそこに住むお客様ご自身です。
しかもそれには時間の経過も欠かすことのできないエレメント。つまり理想のお庭をつくるという作業は一カ月や二カ月で完成するモノではないと言う事。
だから、焦ることはありません。一度に作ってしまおうと気負うことはありません。ゆっくりとゆっくりと日々の暮らしの中で気長にお庭と向き合って、どこに何を植えようかなあ?!とか、どこに小径を敷こうか、どんな材料を使おうか?! そんなことを楽しみながら考えることも必要なプロセスなんです。
そう、お庭は住まう人と共に成長してこそ美しい。
深々と降り積もる雪、ポカポカと暖かく降り注ぐ春の日差しやギラギラと照りつける夏の太陽も、落ち葉舞う秋の木枯らしも。
大地を覆う苔類やハーブ、壁を這うツタ類たちと共に生き、共に成長するお庭との暮らし。一緒に成長しながら共に美しく年を重ねたい。ぼくはそんな人生を送りたい。
それではまた。