カーポートの設置には確認申請が必要なのか?
いつもご覧いただきありがとうございます。富山です。
昨日、今年最後のカーポート設置が無事に終了し、これにて滞りなく本年の工事が全て終了いたしました。今年も事故やケガもなく一年を終われる事に感謝です。これもひとえにお客様のご協力と仕入先様や協力業者様、そしてスタッフ全員のおかげです。本当にありがとういございました。
今年は極端に雪が少なく、拍子抜けするほど作業は順調でしたけれど、それでもやっぱり地面が凍り付く可能性が高いので予め地中に型枠を埋設して対策を施しておきました。生コンには凍れ上がりを防止するための防凍材と早く固まるように早強材を添加し万全を期して施工しています。寒い時期の施工に不安を覚えるお客様もいらっしゃいますがきちんと対策を施しておけば問題なく施工が可能なのでご安心ください。
とはいえ、12月の後半にもなるとさすがに寒いので作業は相当にしんどいです。予め設置した型枠に浮き出てきた地下水を汲み上げるのも一苦労です。なんせ冷たいから。
深さ40cmは溜まっていた地下水。これなら立派な井戸も難なく掘れそうですね。外構的には嬉しくない話しですが以前、石狩のお客様で地下水をパイプで汲み上げて生活水として活用されていらした方がいて水道代が掛からないから助かると言ってました。
残念ながらアスファルトの仕上工事は春までお預けですが、なんとか本格的な降雪までに設置が完了できて本当に良かったです。これでいつドカンと降っても大丈夫ですよー!
カーポートに確認申請は必要なのか?
ところで皆さん、カーポートの設置には確認申請が必要だということをご存知でしょうか?! 案外知られていないのですが実は必要なんですよ確認申請。いやいやそんな話し聞いてなし、知らなかったわ!って方も多いと思うのですが無理もありません。申請などされずに設置している場合がほとんどだし、購入の際に説明を受けていない場合もあろうかと思います。また、話しが複雑すぎて聞いても今一つピンと来ていない方も多いのでないかと思います。そんなワケで今日はカーポートの設置に関する法的なお話しをさせて頂きたいと思います。
詳しい説明の前に最近、ホームセンターやハウスメーカーさんがカーポートの提案に対して消極的だとの話しを良く耳にします。その理由は近隣トラブルによって苦情を言われてしまう事案が発生しているからだという。
どのような苦情かと言いますとカーポートが建った事によってお隣に日が差さなくなってしまうとか、屋根からの落雪によって敷地に雪が積もってしまうとか、あるいは単なるお隣同士の不仲から嫌がらせ行為によるものまで、理由は様々のようです。いずれにしましても近隣トラブルによって無申請建築を指摘されるのを避けたいがためにカーポートを敬遠しがちになっているというワケらしいのです。
冒頭でご紹介した通りに、ほとんどの方は申請しないでカーポートを設置されているワケですが近隣トラブルでそこを突っ込まれるのを嫌って大手の会社はカーポートの取り扱いを躊躇っているという事のようです。だからと言うワケではありませんが申請の有無に関わらず、「お隣さんには迷惑を掛けない」この点には十分に配慮が必要だという事も忘れてはなりませんよね。
カーポートが確認申請を通らない理由とは?
さて、肝心なカーポートの申請が通りにく理由は大きく分けて2つあります。それぞれに複雑な法律上の前提条件や様々な緩和措置があるためにあくまでも参考程度でしかありませんが重要な点をいくつかご紹介させていただきます。
敷地境界線からの離隔距離問題
まず一つ目は離隔距離の問題です。たとえカーポートであっても基本的に建物と同じように敷地境界線から1メートル以上離して建てなければなりません。いろいろな緩和措置もあるので必ずとは言えませんが、ある一定の距離を離す必要は必ず生じます。
それとは別に近隣への配慮という観点から民法上は50センチメートル以上を離して建てるように定められています。この50cmとは日照の問題や雪庇の問題によって近隣トラブルに発展しないように考慮された民法上の取り決めなので建築基準法とは関係のない話しですが、こちらについても承知しておく必要があるでしょう。
いずれにせよ土地が広い北海道とは言え、ペースに余裕が無いケースが多いのでこの条件に合致しない場合がとても多いでしょう。
そもそも道路から1メートルも離して建てちゃうとせっかくカーポートがあっても朝の出勤時に除雪から始めなくちゃならないなんて残念過ぎるでしょうにねぇ。
建ぺい率と容積率の問題
それぞれの自治体において都市計画の方針によって敷地の用途が決められています。これがいわゆる用途地域という区分でして、第一種低層住居専用地域だとか第一種居住地域だとか、いくつかの区分に分けていてそれぞれに建ぺい率と容積率が定められています。これはどちらとも敷地面積に対する建物の大きさを制限している重要な法規です。
あらかじめカーポートの設置を想定して住宅を設計しているならば問題は無いのですが、そうすると建物が狭くなってしまうため、ほとんどの場合はカーポートを面積に算入させずに確認申請を行っているケースが多く見られます。
上記2つの問題がある以上は現実的にカーポートを設置可能な住居は敷地が広い場合に限られてしますワケです。
って事で特例的に後から出来た法律に「建築基準法施行令第2条第1項第二号の規定に基づく国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造 」(平成5年 建設省告示1437号)ってのもあったりします。これは少しでも規制を緩くしようと考えられた施行令だと思うのですが、残念ながら実際はまったくもって緩和には寄与していません。具体的に施行令の中身を見てみましょう。
国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造なら除外?!
施行令第2条第1項第二号
建築面積 建築物(地階で地盤面上一メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。
建築物といってもカーポートなんて壁が無いただの屋根なんだから少しくらいなら算入させる面積を減らしても良いんじゃね?!ってな感じで四辺それぞれから1メートル後退させた面積におまけしようじゃないか、という施行令がこれですね。
この追加法令が施行されたおかげで以前よりはカーポートも設置しやすくなったと思いきや、案外そうでもない。
何故ならば国土交通大臣は何をもって高い開放性を有すると認めるかを定めた法令が問題なんです。それがこちらの「平成5年 建設省告示1437号」
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第二条第一項第二号の規定に基づき、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造は、次に掲げるものとする。
一 外壁を有しない部分が連続して四メートル以上であること
二 柱の間隔が二メートル以上であること
三 天井の高さが二・一メートル以上であること
四 地階を除く階数が一であること
ここで問題なのが2番の柱の間隔が二メートル以上であることって言う行ですね。残念ながら積雪対応のカーポートはどれもこれも柱の間隔は2メートル未満なんですよねぇ。だから全国的には良くても残念ながら北海道ではほとんどが緩和措置の対象にはならないのです。
そうは言っても鉄製など一部は対象となるカーポートも存在しているワケなので、ちゃんと確認申請を通してから設置している人がそこそこ居てもおかしくないのですが、そうなっていないのは掛かる費用がとっても大きいからなのだと思うのです。
確認申請にかかる費用が高すぎる
いやいや、うちは土地が広いから離隔距離や建ぺい率の問題なんぞ取るに足らんぞ!って方もいらっしゃいますよ確かに。それでもやっぱり申請する人が少ないのは費用的な問題があるからなんですね。確認申請を行うには2級建築士以上の資格が必要なのですがこの方たちに支払う手数料は20~30万円くらい掛かると言われています。なんでこんなに高いの?と思われるかも知れませんが法律が複雑なだけに行ったり来たりでひどく手間が掛かるものと推察されます。だって現状はほとんど申請者がいないワケだから申請する側もされる側も慣れていないでしょ?!だから凄く手間が掛かるようなのです。
ぼくが建築士の資格を取得できたあかつきにはもっとお安く申請する事も可能ですが、言うほど簡単な資格では無いので一体いつになることやら・・・
規制を緩和し、更には手続きの簡素化が必要
ってか資格なんて無くたってカーポート程度の申請なんぞルールに合致してさえいれば誰が申請しようと構いやしないのではないかと思うのですが、規制を緩めてしまうと申請者が大量に押し寄せる事になって市の建築課が対応に追われて困ってしまう事になるから、それはそれで問題なんでしょうね。だからって誰も申請してこないのを良いことに見て見ぬふりをするのはいかがなものか?!
これだけ需要があって、今や雪国では欠かせないアイテムとなりつつあるカーポートが、このように後ろめたい気持ちで設置せざるを得ない状況はいったいいつまで続くのか?! 現状、残念ながらぼくの立場から言える事はカーポートの設置には確認申請が必要ですよって、話しと、でも申請をしないで建てている人が大多数ですよ。最終的に申請するかしないかはお客様のご判断です。としか言えないのです。あとはトラブルを招かないように近隣への配慮を欠かないこと。それしか対策の施しようがありません。それが嫌ならカーポートを諦める他ないのです。
そういうわれわれ業者側も無申請の設置を請け負っているワケですから最悪は営業停止処分などのリスクが付きまといます。にもかかわらずこのようにぼくがブログで説明しているのは少しでも多くの方にこのような現状を知って欲しいからなのです。法律を変えるには立法府である国会での法律改正が必要となるわけですが、政治家を動かすのは国民の声しかありません。少なくとも誰もが見て見ぬふりを続けている限りは規制の緩和と手続きの簡素化は実現しないのだから。
でもやっぱりカーポートがあると便利なんですよ。こんな便利なモノがあるのにトラブルを避けたいがために取り扱いを渋るなんてこと、ぼくには到底できそうにありません。だって設置してくださったお客様方が皆さん喜んで下さるんですから、こんなやりがいのある仕事、簡単には諦められないでしょ?!