アプローチを気持ちよく歩くための工夫
お家の顔であるアプローチ、家の印象を左右する大切な場所でもあるのでぼくは見た目と使いやすさを考慮して丁寧なデザインを心がけています。
特にデザインでは玄関先から歩道までのアプローチを直線的に描いてしまうと面白みに欠けるし、柔らかい印象にしたいのでぼくは結構な割合で曲線(そうじゃない事もあるけど)を取り入れます。ところがこの曲線がまさにくせもの(曲者)で、例えば真っ白な紙に鉛筆で円を描いてみて下さい。どうですか、意外と難しいでしょ?!
でも、例え図面上でキレイな曲線を描けたとしても実際に見てみると意外としっくりこないカーブも存在するから厄介です。という事で今日はアプローチのデザインついてをご案内したいと思います。
コーナーの内側が広く見える【目の錯覚】
図面上では上手く曲線が描けたと自己満足していても実際に施工してみると、どうもしっくりこない。どうもコーナー部分が太くてデブッチョに見えてしまう。外構の職人さんであればきっと誰しもが抱く疑問だと思います。実はコレ、「曲方指向」という目の錯覚が原因なんです。
自動車を運転しているときに、自然とカーブの内側に寄ってしまうことはありませんか? 山道などで運転中にカーブを見ると、左カーブでは左側車線が広く、右カーブでは右側車線が広く見えるという目の錯覚が起きます。人間は広く見えるほうへ寄っていく性質があることから、カーブを運転する時はカーブの内側にクルマを寄せすぎる場合があります。これを「曲方指向」といい、カーブの大小にかかわりなく起きてしまいます。
つまり、住宅のアプローチにおいても同じようにコーナーの内側が広く見えてしまうと言うことなのです。
下に同じようなS字ラインを描いてみました。パターンAは一般的な道路と同じS字クランクを1.8mのアプローチ幅で描いています。対してパターンBは水平方向に1.8m幅でS字ラインを描いたものです。
一見同じように見えるラインですがよーく見るとパターンBは真ん中のウエストあたりが細くなっているのが分かると思います。この細いウエストラインが目の錯覚を和らげてくれる効果をもたらしてくれるので実際に歩いてみるとパターンBの方が違和感が無いのです。
何だか不格好に見えてしまうS字ラインはこのせいだったんです。ちょっとしたコツで仕上りがずいぶんと違うものですよね?! DIYでレンガ舗装を敷かれる方はぜひ参考にして下さい。
視線を誘導する【遊び心】
もうひとつ大事なことは玄関を目指して一直線にラインを描くのではなく、花壇や門柱などのアイキャッチとなる場所に向けてラインを出して、少し視線を遊ばせてから玄関に向かって歩かせる工夫も大事です。心の緊張を解す役割があるし、気分を切り替えるきっかけにもなりますから。
ぼくなんか、仕事で思い通りに行かなくてちょいちょいイライラした気持ちで家に帰ってしまい、しまいには家族に八つ当たりしてしまったりするので、アプローチでキレイな花を眺めながら気持ちを切り替えて帰る心がけも案外と大事です。玄関を開けたらいつもの明るいお父さんお母さんの顔で「ただいまー」って明るく帰りたいですよね。
今日はアプローチのデザインについてのお話しでした。ぜひ参考にして下さい。
アプローチの横に花壇を設けて、LEDでライトアップすると夜でもキレイなお花が癒してくれます。とっても綺麗ですよねぇ。
もう少しで完成するアプローチです。こちらの花壇にも花が咲き誇って優しく出迎えてくれるんでしょうねぇ。
それにしても、いつもぼくの描いた図面を忠実に再現してくれる職人さん達に本当に感謝です。もちろん、ぼくのデザインを受け入れて下さるオーナー様にも感謝。